The Hidden Blade (2004) : 隠し剣 鬼の爪

『隠し剣 鬼の爪』(かくしけん おにのつめ)は、藤沢周平作の短編時代小説を原作とする日本映画。山田洋次監督・永瀬正敏主演で2004年10月30日に公開。東北地方の小さな藩で暮らす秘伝の剣術を習得した武士が、親友の謀反で起こった藩内の騒動に巻き込まれながらも、かつて自らに仕えていた百姓の娘との身分違いの恋に心を揺らされる模様を描いている。

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隠し剣 鬼の爪 (2004) / The Hidden Bladeのあらすじ

幕末。東北の小藩である海坂藩の平侍であった片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母と妹の志乃(田畑智子)、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていった。心中は寂しいが武士としての筋目を守り、日々をすごす宗蔵。海坂にも近代化の波は押し寄せつつあり、藩では英国式の教練が取り入れられ始めていた。

ある雪の日、宗蔵ときえは3年ぶりに町で再会する。大きな油問屋の伊勢屋に嫁して幸せに暮らしているとばかり思っていたきえの、青白くやつれた表情に宗蔵は胸を痛める。きえが嫁ぎ先で酷い扱いを受け寝込んでいることを知った瞬間、彼は武士の面目や世間体を忘れ去って走り出していた。伊勢屋を訪れた宗蔵は、陽のあたらない板の間に寝かされ、やつれ果てたきえを見ると、自分で背負い家に連れ帰る。

回復したきえと共に暮らし始め、宗蔵は心の安らぎを覚える。だが、世間の目は二人が同じ家に暮らすことを許さなかった。宗蔵はきえを愛している自分と、彼女の人生を捻じ曲げている自身の狡さに悩む。そんな時、藩に大事件が起きた。宗蔵と同じく藩の剣術指南役・戸田寛斎の門下生だった狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反を企んだ罪で囚われ、さらに山奥の牢を破って逃げ出したのだ。宗蔵は、逃亡した弥市郎を斬るよう、家老の堀(緒形拳)に命じられる。そうすれば、狭間と親しかったお前の疑いも晴れると。

かつて狭間は門下生の中でも随一の腕前であった。しかしある時を境に宗蔵に抜かれ、それを宗蔵が戸田より授かった秘剣「鬼の爪」によるものだという不満を抱いていた。狭間の妻からの命乞いを拒んだ宗蔵は、不条理さを感じつつも藩命に従い、狭間との真剣勝負に挑む。戦いの中、宗蔵は語る。「鬼の爪」とは、狭間の思うような技ではないと。そして宗蔵は師より新たに伝授されていたもう一つの秘剣「龍尾返し」を用い、「鬼の爪」を振るうことなく狭間を倒す。深手を負った狭間は「龍尾返し」を「卑怯な騙し技」と罵りながら、失意の中で鉄砲隊に撃たれて死んだ。

しかし戦いのあと、堀が狭間の妻を騙し、辱め、彼女を死に追いやった所業を知るにおよび、ついに「鬼の爪」が振るわれる。城内の廊下で進み出て控える宗蔵を見咎め、何の用かと問いただす堀。宗蔵が不意に逸らした視線につられたその刹那、全ては終わっていた。無表情に立ち去る宗蔵を呆然と見つめた後、倒れる堀。大慌てで医師が呼ばれるが、既に堀は事切れていた。遺体を検分した医師も、あまりに奇妙な遺体の状況に匙を投げ、ふと呟く。これは人間ではなく、何か別のモノに与えられた傷ではないか、と。実は「鬼の爪」とは、胸についた心臓に至るほんの一点の僅かな傷跡を除けば一切の証拠を残さず一撃・一瞬にして相手を屠る小柄を用いた暗殺剣であり、およそ武士が決闘の場で振るうに相応しいものではないどころか、口にするのも憚られる裏の技であったが故に、宗蔵はああ言ったのだった。

自分に誠実に生きる意味が深くわかった男の足は、女のもとへ向かっていた。武士を棄てて蝦夷に向かう宗蔵は、きえに一緒に来て欲しいと素直な言葉で語る。陽光の下で笑いあう二人。

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